明るい話が殆ど無い。 5月24日の新聞に今春の大卒就職率の記事が出ていた。
結果は統計を取り始めた1997年以降で最低であった「就職氷河期」と言われた2000年と同率の91.1%であった。
文部科学省と厚生労働省が2010年10,12月と2011年1,4月の各月1日に全国の国公立大、私立大、短大、高専、専修学校112校の学生数6250人を対象に追跡調査した抜き取りデータである。 3月11日の東日本大震災のため、東北の3校のデータを除外したものである。 東北地方の実態を加味したら、上記数値より悪い結果になったであろうと推測している。
就職率は就職希望者のうちで就職できた割合である。 今春の卒業生数は55万5千人であり、その内で就職希望者数は前年とほぼ同じの66.4%の約37万人である。 就職率が91.1%であるから約3万3千人が就職できなかったことになる。 ほぼ10人に1人が就職できなかったのである。
留学を含めた進学予定者や自営業への就業者、ごく少数であろうが政治や芸術方面に志向する者は対象外である。
実態は就職率に表れた数値より厳しい。 「新卒」の肩書を失わないために留年を選ぶ学生も多い模様である。 こうした「就職留年」は反映されていない。
5月24日の朝日新聞にはこんな主旨の記事も有った。
卒業してしまうと、やり直しがきかないような気がして、内定が決まらないために、卒論を書かず留年の道を選んだ人もいるという。
東京都内の卒業したある男性(23)は、5月半ばに「就職応援ハローワーク」に足を向けた。
昨年、公務員試験に落ち、秋頃から就職活動を始めた。 営業職志望だが、面接ではせっかく準備した答えをスムーズに切り出せなかった。
「卒業までには決めて見せる」と追い込みをかけていた矢先、東日本大震災が起きた。
エントリーしていた3社が、震災を理由に採用を取りやめた。 結局、内定を取れないまま卒業を迎えた。
就職が決まらなかったことを地震のせいにした時期も有ったが、今は自分の責任とふっ切った。 「2度目の就活では、もっと素の自分を出したい」
また、今回の就職状況調査に盛り込まなかった被災地からは深刻な実話を聞かされたそうだ。
3月に東北のA大学を卒業した女性は、在学中に東京に本社を置く金融会社の仙台支社への内定が決まっていた。 営業で車を使うため、練習用にと、軽自動車をローンで買った。 しかし、震災直後、金融会社が倒産し、内定取り消しの通知が届いた。
3月は就職活動どころではなかった。 新車のローンは残ったままであり、「今は希望も何も考える暇がない。 とにかく内定を取るしかない」
読むに耐え難い記事である。 10年以上も教育しておいて、若者をこの窮地に追い込んでしまった国家こそ責任を負って頂きたい。
上記の事例はほんの氷山の一角の具体例であろうがӀ�3万3千人には各々固有の聞くに堪えない実態が有るものと思う。
この他に、中卒や高卒で就職できなかった若人もいる。 更に昨春に就職できなかった若者もどうなったことであろう。 思いは尽きない。
このブログの4月17日に国内の年間自殺者が年間で約3万3千人であるということを掲載したが、図らずも今春の大学卒業者で就職できなかった人数が同じ3万3千人のレベルである。
この状況が10年間も続けば、希望に燃えて社会への門出の志を打ち砕かれる若者は30~40万人となり、この数値は地方の県庁所在地の都市人口に近い。
繰り返しになるが、6~7歳で小学校に入学して以来13年間も学校で生活し、新しい第2の人生のスタートにこの様な苦難は厳しすぎると思う。 この椅子取りゲームは余りにも酷である。
東日本大災害によって肉親を失い、家屋を失い、職を失い、夢も希望も失ってしまった人達の悲しみ、悔しさ、失意の気持ち等を理解するには余りあるが、就職の機会を得られなか〣た若者やご家族の方々の置かれている状況もそれらに勝るとも劣るものではないと思う。
政界で不信認だ、否決だ、また大連合だ、不合意だと政争に明け暮れている政治家達もいい加減にしてほしい。 官僚も企業経営者達も日本の若者や日本の将来を真剣に考えて頂きたいものである。
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