10日前のこのブログにも掲載したのだが、IMF専務理事であるドミニク・ストロス・カーン氏が女性強姦未遂容疑で米当局に逮捕され、本人は事件に対して全面的に否定しているそうである。
IMFは為替相場の安定を図ることなどを目的に1944年7月に設立され、世界銀行と共に、国際金融秩序の根幹を成す国際機関であり、現在の参加国は184である。 専務理事はその最高責任者である。
ドミニク・ストロス・カーン氏はアメリカで2007年の夏から住宅価格が下落し始め、サブプライムローン問題が騒がれ出したが、その年の11月に専務理事に就任した。 IMF創立以来、約60年を過ぎるが、専務理事のポストは全てヨーロッパ諸国の指定席であり、なぜか歴代10人のうち4人がフランス出身である。 ヨーロッパの中での大国であり、リーダー的存在の国であるということなのであろうか。
一方、世界銀行の総裁は歴代11人が全てアメリカ人で占められている。 世界銀行の総裁もIMFの専務理事はなぜかイギリス人は一人も就任していない。
第二次大戦後、世界のどこかで金融危機が発生するとIMFが殆ど登場して、対象の国へ緊縮財政の堅持を条件で資金援助を行ってきた。 金融危機はその国の財政危機が深刻化し、国債利回りが急上昇し、運用資金の借り入れが困難なために、IMFに頼らざるを得ないのである。 IMF資金を受け入れた政府は財政支出の削減を国民に強いなければならない。 対処の仕方としては所得税や付加価値税(又は消費税)などの増税、公務員の削減や賃金の圧縮、年金などの社会保障費の圧縮などが国民に要請される。
IMFの専務理事だったドミニク・ストロス・カーン氏もフランスのサルコジ大統領もEU危機の渦中にいる。
ヨーロッパには「PIIGS」といい、アルファベットの国名の頭文字、ポルトガルのP、アイルランドのI、
イタリアのI、ギリシャのG、スペインのSであるが、この5カ国の財政状況が大いに問題が有るとされている。 特にギリシャの金融危機は喫緊の問題である。
EUの盟主国であるフランスとドイツはギリシャへの金融支援に対して、IMFの関与に否定的であった。
ギリシャの財政危機は再建の90%がユーロ建てである。 ギリシャ危機はユーロ圏内で解決できる問題である。
ギリシャがIMFの支援を受け入れると、EUとユーロの信認が疑われることになるとの考えで有った。
IMFの専務理事だったドミニク・ストロス・カーン氏もフランスのサルコジ大統領もEU危機の渦中にいる。
ドミニク・ストロス・カーン氏は1997~99年にフランスのジョスパン大統領の財務大臣であり、「社会党」の大物議員であったし、2012年の大統領選挙に出馬も噂されていた。 サルコジ大統領は与党「国民運動連合 (UMP)」を率いている故に政敵である。
ドミニク・ストロス・カーンがIMFの専務理事として、ギリシャなどのEU問題に関与し、サルコジ大統領はギリシャを始めとしたEU問題解決でドミニク・ストロス・カーン氏成果を上げることを歓迎できる立場に無い。
ドミニク・ストロス・カーン氏は2010年2月に「ギリシャから要請が有れば支援する」と発言し、一方でEU本部からの支援のテンポが遅いことにしびれを切らしたギリシャの財務大臣・パパコンスタンティヌスは2010年3月に「EU支援を期待するが、支援がない場合はIMF支援の可能性は排除しない」と発言している。
対ギリシャ資金支援はその後、紆余曲折が有ったが2010年5月にEU中央銀行から800億ユーロ、IMFから300億ユーロ、合計1100億ユーロの資金支援が決定した。
この支援では不十分であり、追加支援の申し出が有り、ギリシャ政府に対してEUとIMFからのさらなる財政圧縮要請がり、毎日それに対して国民の強い反対が続いている。
以上は1年前の状況である。 それ以降の状況はさだかではないが、
ドミニク・ストロス・カーン氏は2011年5月14日に最初に記した理由で逮捕された。
「真相は神のみぞ知る」である。