2011年6月24日金曜日

IMFトップ逮捕事件の真相は?


10日前のこのブログにも掲載したのだが、IMF専務理事であるドミニク・ストロス・カーン氏が女性強姦未遂容疑で米当局に逮捕され、本人は事件に対して全面的に否定しているそうである。
IMFは為替相場の安定を図ることなどを目的に19447月に設立され、世界銀行と共に、国際金融秩序の根幹を成す国際機関であり、現在の参加国は184である。 専務理事はその最高責任者である。

ドミニク・ストロス・カーン氏はアメリカで2007年の夏から住宅価格が下落し始め、サブプライムローン問題が騒がれ出したが、その年の11月に専務理事に就任した。 IMF創立以来、約60年を過ぎるが、専務理事のポストは全てヨーロッパ諸国の指定席であり、なぜか歴代10人のうち4人がフランス出身である。 ヨーロッパの中での大国であり、リーダー的存在の国であるということなのであろうか。
一方、世界銀行の総裁は歴代11人が全てアメリカ人で占められている。 世界銀行の総裁もIMFの専務理事はなぜかイギリス人は一人も就任していない。

第二次大戦後、世界のどこかで金融危機が発生するとIMFが殆ど登場して、対象の国へ緊縮財政の堅持を条件で資金援助を行ってきた。 金融危機はその国の財政危機が深刻化し、国債利回りが急上昇し、運用資金の借り入れが困難なために、IMFに頼らざるを得ないのである。 IMF資金を受け入れた政府は財政支出の削減を国民に強いなければならない。 対処の仕方としては所得税や付加価値税(又は消費税)などの増税、公務員の削減や賃金の圧縮、年金などの社会保障費の圧縮などが国民に要請される。

IMFの専務理事だったドミニク・ストロス・カーン氏もフランスのサルコジ大統領もEU危機の渦中にいる。
ヨーロッパには「PIIGS」といい、アルファベットの国名の頭文字、ポルトガルのP、アイルランドのI
イタリアのI、ギリシャのG、スペインのSであるが、この5カ国の財政状況が大いに問題が有るとされている。 特にギリシャの金融危機は喫緊の問題である。 

EUの盟主国であるフランスとドイツはギリシャへの金融支援に対して、IMFの関与に否定的であった。 
ギリシャの財政危機は再建の90%がユーロ建てである。 ギリシャ危機はユーロ圏内で解決できる問題である。
ギリシャがIMFの支援を受け入れると、EUとユーロの信認が疑われることになるとの考えで有った。
IMFの専務理事だったドミニク・ストロス・カーン氏もフランスのサルコジ大統領もEU危機の渦中にいる。
ドミニク・ストロス・カーン氏は199799年にフランスのジョスパン大統領の財務大臣であり、「社会党」の大物議員であったし、2012年の大統領選挙に出馬も噂されていた。 サルコジ大統領は与党「国民運動連合 (UMP)」を率いている故に政敵である。 

ドミニク・ストロス・カーンがIMFの専務理事として、ギリシャなどのEU問題に関与し、サルコジ大統領はギリシャを始めとしたEU問題解決でドミニク・ストロス・カーン氏成果を上げることを歓迎できる立場に無い。
ドミニク・ストロス・カーン氏は20102月に「ギリシャから要請が有れば支援する」と発言し、一方でEU本部からの支援のテンポが遅いことにしびれを切らしたギリシャの財務大臣・パパコンスタンティヌスは20103月に「EU支援を期待するが、支援がない場合はIMF支援の可能性は排除しない」と発言している。

対ギリシャ資金支援はその後、紆余曲折が有ったが20105月にEU中央銀行から800億ユーロ、IMFから300億ユーロ、合計1100億ユーロの資金支援が決定した。 
この支援では不十分であり、追加支援の申し出が有り、ギリシャ政府に対してEUIMFからのさらなる財政圧縮要請がり、毎日それに対して国民の強い反対が続いている。

以上は1年前の状況である。 それ以降の状況はさだかではないが、
ドミニク・ストロス・カーン氏は2011514日に最初に記した理由で逮捕された。
「真相は神のみぞ知る」である。

2011年6月23日木曜日

高知県梼原町 自然エネルギーで、町づくり


太平洋からも、瀬戸内海からもかなり離れた四国のカルスト台地に高知県梼原(ゆすはら)町がある。 その町に2009年まで312年間、町長を務めた中越武義さんがいる。
中越さんは町内に風力、太陽光、地熱、小水力、バイオマスなどの自然エネルギーを次々に採用していった。 「自然と共生のまちづくり」の成果を更に全国に広めようと最近、「こちら健康・省エネ住宅推進協議会」会長に就任したそうである。

中越氏は3期務めたが、方針は生き目は前任者の政策を継承し、2基目は自分の政策を実行し、3期目は実行案件を仕上げ、チェックして、町民に惜しまれながら、後進に町長の座を引き継いだそうである。 早く辞任を迫られながら権力の座にしがみつく現在の首相と大きな違いである。

梼原町は人口3900人弱、面積は236平方キロであるから、東京の山手線内の面積(65平方キロ)の34倍ほどである。
中越町長は就任の翌年から環境問題に取り組んだ。 1999年に風車を2基設置し、1200キロワットの電力は300戸分の電力をまかなった。 当時3億円の税収で22千万円を投資し、電力は四国電力に買い取ってもらった。 風力発電で年間4千万年の収益となった。
この収益金を積み立て、2000年には「森との共生」に取り組んだ。 町の面積の91%は森林であり、森林は荒れ放題で有ったという。 そこで5㌶(5万平方メートル)以上の森林の間伐や手入れをすれば、1㌶当たり、10万円を支払った。 結果として、森林はよみがえり、雇用も生まれた。 間伐材は木質ペレットとしてバイオ燃料に活用した。
整備された森林は整備され、コースは「森林セラピー」として心身のリフレッシュになるとして都会の人達に愛され、観光として貢献した。

四万十川の清流は6メートル程の落差を利用して、3カ所に小さな水力発電所を作った。 この電力は、昼間は町立の学校に利用され、夜間は街路灯として通行人に役立った。
役場、学校などの町立施設の屋根には太陽光発電の装置を取り付けた。 地熱を利用して温水プールを作った。
町民が太陽光発電を設置する場合はキロワット当たり20万円を補助した。 現在は100戸以上が設置しているため、四国では普及率は一番高いという。

これらの環境対策はトップダウンではなく、町民からの意見を大いに取り入れたという。 町民より公募で15人に欧州を視察してもらい、町づくりの提案をしてもら他つぉうだ。
現在、町の財政は県内トップの健全性と安定性を維持し、山奥の過疎の町でありながら、7人の医者がいる町立病院の経営も順調で有るという、全く羨ましいい限りである。

町長を辞任後は県内の山の森林資源を活用して、高齢者や弱者が安心して生活できるよう、健康と省エネを兼ねた住宅を開発し、全国に発信してゆくそうである。 ご成功をお祈りしたい。

2011年6月21日火曜日

静岡の緑茶 フランスで基準オーバー

619日の新聞の夕刊によるとフランスはシャルル・ドゴール空港で、日本から輸出された緑茶から基準値の2倍を超える1㌔当たり1038ベクレルの放射性セシウムが検出され、廃棄処分すると発表したとある。
欧州連合(EU)の基準値は1㌔当たり500ベクレルである。 EUは東北3県を含んだ12都県で生産された食品は、放射線基準値以下であることを示す証明書の添付を義務付けていたが、静岡県は対象外だったそうである。 

静岡県知事は「情報を確認し、早急に輸出ルートを調査する」と、あたかも県内では厳格に管理しているという趣旨の発言をしている。 また、同県の経済産業部は他県産又は海外産の茶葉を加工して出荷する場合も有ると発言している。 県内の茶商組合長は「過去にも産地や数値が違っていたことも有る」と発言していた。

翌日、21日の新聞では静岡県の発表として、輸出時の証明書では同県御前崎市の茶商工業者が製造したものであった。 玄米茶であり、重量比で45%の玄米を占めている。 玄米は昨年の生産品である。 
茶葉は「自主検査」を行い、基準値は1㌔当たり500ベクレルであり、EUの基準と同じである。
県は業者に対してフランスより対象の玄米茶の回収を要請するとともに、国内に有る在庫品のサンプルを公的検査部門に検査を依頼する方針だという。
新聞社の調査ではフランス側の検査結果に疑問を抱いている。 自主検査では茶葉を6回検査し、最高値でも1㌔当たり約400ベクレルだったそうだ。
茶葉は玄米茶中では宅半分にあり、フランスの検査結果は基準値の2倍だったというのだから信じられない話である。 早く真実を知りたいものである。

我々も消費者として、この問題は無視できない話である。 茶葉に限らず、食品全般に及ぶ話である。 「自主検査」に問題がなければ幸いである。 
テレビを見ていても、例えば放射能の検査でも、自治体の測定者のサンプリングの仕方などは
日本の製造業に携わった人間にとっては、あれで良いのだろうかと思う。
工業製品で有れば、例えば「長さ」の測定などは高精度を要求する場合には、検査(測定)を担当する作業者は,その精度の度合いに応じて適格者を指名する。 
旧労働省の管轄のもとに「技能検定」という国家試験制度が有り、60種目以上に細分化されている。 技能レベルも数段階に評価されている。 対象によって異なるが、「分析」という科目で有れば、「サンプリング」の仕方から資格検定の対象になる。 
そもそも、この様な制度は欧米の模倣である。 
現在、欧州では「EU規則」などが立派に整備されえているはずである。 国境を超える活動は相手国・地域の「規則」や「標準」をよく検討すべきだと思う。

2011年6月20日月曜日

国際学力テスト 上海の小学校 初参加で首位

経済協力開発機構 (OECD) 2000年から加盟国の15歳の生徒を対象として、学習到達度調査(Programme for International Student Assessment, PISA)を始めた。 この調査を以下PTSA(ピサ)とする。
3年ごとに実施し、2000年は32カ国で有ったが、2009年は65カ国に拡がった。 科目は「読解力」「数学」「科学」の3科目である。
2000年から2009年までの4回の3科目の総合点の国別順位が上図である。 
日本は2000年に8位から2006年には15位まで順位を下げたが、2009年は8位まで戻した。 欧米ではフィンランド、カナダ、ニュージランドやオーストラリアが上位に食い込んでいるが、アジア勢はその上である。 韓国、香港が強いが、2009年には上海が初参加で突然1位に進出した。 上海は3科目で1位である。 

上海には公立小中学校一貫校が約1600校ある。 経済発展が激しい上海は、1990年代以降に教育格差を縮小するために教育改革に取り組んだ。 学力の上位校と下位校と組み合わせて教師や教育方法を交流させ始めた。 いわゆる「ペア制度」の導入である。 貧困地帯の生徒の家庭にはパソコンの無い場合も多かったが、学校では音声やIT環境に慣れさせるように努めた。 視覚や聴覚を利用して、視聴覚の理解に重点を置き、脱「詰め込み」に挑んだ。 「書画」、「器楽」や「囲碁」などに力を入れている学校もあるという。 
「囲碁」は数学的な力や集中力、多角的な思考力に影響するらしい。 また、算数や数学は土地の面積と価格など、生活に即した題材を取り入れるような工夫もしているという。
「ペア制度」の導入で学力の下位校が上位校に引き上げられて、学力の低い層が減少したことと、経済力の上昇と共に上位層の学力が更に上昇したことが大きいのであろうという分析も有るそうだ。

このブログに載せた、618日の海外の留学生増、特にハーバード大など優秀大学への留学生の増加、619日の国際科学オリンピック大会などと流れなのだろうか。 背景は経済力の伸長なのだろうか。

2011年6月19日日曜日

国際科学オリンピック


高校3年生を対象とする「国際科学オリンピック」が世界規模で毎年開催されている。
1959年に7カ国で「数学オリンピック」を開催し、それ以降「物理」「化学」「情報」「生物」と科目も拡大され、参加国は科目にもよるが100カ国と言うのも出てきた。
最近は「科学」以外にも拡大され、「哲学」「天文学」「地理」「言語学」なども登場してきた。 「言語学」オリンピックなんて、どういう内容なのだろうか。

科目によって企画が異なるようであるが、「数学」オリンピックでは中国は「国際大会」への参加は1985年からである。 1990年に北京で開催された「国際大会」の参加者は6人中5人が金メタルを獲得した。 総合点で旧ソ連、米国を上回る1位となり、当時の江沢民総書記らが参加者を賞したという。
2010年の成績は上表の如くである。

中国では「科学オリンピック」の参加者は5科目で4050万人であり、「地方大会」を含めると100万人を超えるという。 日本ではここ数年参加者が急増しているが、まだ1万人程度で有るそうだ。

中国では「地方大会」の上位に選抜された参加者は半年前に「志望大学」の合格通知を取得できる学生が多いという。 「青田買い」である。 
「数学」オリンピックの「国際大会」は今年7月にトルコで開催されるが、「国際大会」の参加者は国内の志望大学の「内定」などには余り興味がない。 「国際大会」で上位に入賞して、アメリカの優秀な大学へ留学することが目標である。

中国の教育当局としては「国際大会」参加者の多くが留学後、海外で活躍して、国内に戻ってこないことが悩みであるという。 優秀な人材の帰国を促す政策造りに取り掛かっているそうだ。 いわゆる「知能流失」防止策である。

2011年6月18日土曜日

海外留学生の減少現象


日本の若者の現象として「草食性・・・」「海外へ出たがらない」「脱自動車」など、日本経済バブル以前と対極的な言葉がメディアに登場するが、この現象は海外留学にも顕著な現象である。
それに対して、アジア全体では日本と異なり、嘗ての日本と同じ状況である。 特に、中国、韓国、インド、などは現在の経済の伸長状況と相関しているようである。

世界の大学で評価が第一位はアメリカのハーバード大である。 
日本人の最初のハーバート大への留学生は1872年に始まり、それ以来、約3000人が留学したそうであるが、
大学への新入生である「学部生」と「大学院生」の学生数は上表の様に右下がりの減少である。
それに対して、中国や韓国からの学生数は右上がりで増加している。
1992年に対して2009年の入学増減では日本は41.9%減、中国は57.1%増、韓国は155.3%増である。
日本の場合、「学部生」は年間1桁であり、風前の灯という状況である。 「学部生」に対して、「大学院生」の比率が多いのは社費負担の企業派遣や国家公務員の派遣の影響であろう。 「学部生」が少ないのは入学試験科目で日本人の得意であった「文法」が廃止され、「聞き取り」や「読解」などに重点が重んじられるようになったことと、日本の高卒の進路決定傾向が保守的であり、世界的な傾向と乖離しているらしい。

中国や韓国など世界的な傾向として、高校レベルで優秀な学生は欧米の優秀な大学へ挑戦し、卒業に際して、海外の社会に活躍の場を求めてもよいし、その貴重なキャリア―を携えて母国へ帰国しても、母国の社会は一般にその実績を評価する社会になっているそうである。
日本の社会は上記と異なり、日本の大学を終了した学生を4月に採用する旧来の習慣から抜け出せないので世界の一般的な傾向と異なるコースになっているらしい。 ここにも、日本の“ガラパゴス現象”が有るのである。

上の表はアメリカの全大学の受入れ留学生数である。 アメリカ以外への留学も同じような傾向ではなかろうかと思う。 
「仕事は人脈」と言われるが、ますますグローバル化する世界に有って、日本は“鎖国”の方向へ進んでいるようにさえ思われる。 日本は海外では小国への道をたどっているのではなかろうかと思う。

2011年6月17日金曜日

海外で 原発ブーム崩壊へ

日本ではアメリカに対し3~4倍の価格である
月刊誌「選択」20222月号に『米欧は安価な「天然ガス発電」に切り替える 「原発バブル」が崩壊』と言う記事が有った。 
この記事の発表されたのは当然、311日の東日本大震災発生以前である。

2010年秋から2011年初頭にかけて世界の原子力関係者に立て続けて衝撃が走ったという。
最初のインパクトは米国で約30年ぶりの再開となるはずだった原発新設計画が凍結されたこと。
2番目は米国エネルギー省エネルギー情報局(EIA)が「長期エネルギー需要見通し」の中で示した、原発ニューズの悲劇的予測であるという。
天然ガス価格の劇的な下落である。 結果として火力発電のコスト競争力の急激な上昇である。 従って初期投資の大きい原発の優位性が失墜したのだそうである。

天然ガスの100万ブリティッシュ熱量単位(Btu)の価格が15ドル(原油換算90ドル)以上であれば、原子力発電でもコスト競争力あるという。 これは産出国の話であり、日本や韓国のような非産出国での目安は24ドル(原油換算144ドル)程度であると言う。
それ対して、現在の100Btu当たり4ドル(原油換算24ドル)という天然ガスの価格では原子力の優位性は無いという。

この状況下で、201012月末の米EIAの公表による衝撃であった。 但し、日本のメディアは殆どとり上げなかったそうである。 どうしてなのだろうか。
いわゆる「シェールガス革命」によって、アメリカの天然ガス生産量は20%増加し、2035年時点の100
Btu当たり7ドル(原油換算42ドル)にとどまり、1000キロワット時当たりの発電コストは天然ガス火力の79ドル、石炭火力の100ドル、原子力発電の119ドルと予測している。

一方、「週刊サンデー」529日号の28頁に米EIA4月発表記事として、「シェールガス」の埋蔵量は中国が世界第1位、アメリカが第2位であるという。 中国は1275兆立方フィート、アメリカは862兆立方フィートである。
1兆立方フィートの天然ガスは都市ガスや発電燃料に使う液化天然ガス(LNG)で2000トンに相当する。
日本は年間7000万トンのLNGを輸入しているため、単純計算では日本が使用するLNG364年分が中国に埋蔵されているが、日本では望みえないそうである。

日本では、この様な話はなぜか一般国民には知らされないようなシステムになっているようである。
このブログでも58日に「シェールガス」「タイトオイル」の採掘技術や埋蔵分布などについて2本取り上げている。