2011年8月25日木曜日

好適環境水によるマグロの養殖

                                              水族館のマグロ

311日の大震災による大津波によって東北の三陸沖から常磐沖に展開する1700キロメートルの海岸線は壊滅的な被害を受けた。 東北3県の18の港湾(大規模)、263の漁港、計281港湾・漁港は殆ど破壊した。 集落は444であるという。 実際の被害は北海道から沖縄にまで及んでいる。 海岸線の漁港施設、ワカメ、ホタテなどの養殖施設、水産物の加工施設などはほぼ破壊してしまったし、漁船の9割に相当する約2万隻も失われた。 
被害額は6500億円とも、1兆円とも推定されている。 漁業や水産加工業には中小企業や零細企業が多い。 震災時点の負債に加えて、復興資金の調達には大きな課題に立ち向かわねばならない。 国内の漁獲高は年間2兆円弱であり、その約2割をまかなっているのであるから、我々にとっても他人事ではない。
北海道大学の平川一臣特任教授の最近の地層調査によると三陸海岸には過去6千年に、今回の津波と同レベルの規模の津波が6回あったという。 今回と同レベルの津波が何時押し寄せてくるかわからない。

近海漁業のみならず、沿岸の養殖施設でなく、山奥でもマグロなどの海水魚の養殖可能な技術に取り組んでいる人がいる。 岡山理科大学専門学校の山本俊政准教授である。 技術の中心は「好適環境水」という。
淡水にわずかに電気を通すように調整した電解質という物質を加えることで、海水魚と淡水魚が同じ水槽内でも生育できるという。 
「新江ノ島水族館」などの水族館設計・施工も請け負っている。 場合によっては海水魚と淡水魚が同じ水槽内に遊泳しているかも知れない。
海水に含まれる約60種の元素の中から、カリウム、ナトリウムなど数種類の成分と濃度を調整している。 これを「好適環境水」とし称し、現在特許を本申請中である。 

「好適環境水」による養殖なら、人工海水養殖に比べ60分の1のコストで済むという。 チョット信じられない数値と思えるが・・・。
海水中での魚類の養殖の場合、魚類に病原菌が繁殖する心配が有るため、魚類の餌の中に薬品を混ぜる場合があるがその必要も無い。 また海水中での養殖では網に貝類が付着しないように、また網の使用年数を長く保つために、網自体に薬品が使用されているため、魚や海に与える危険性もある。 「好適環境水」はその危険な薬品も使う必要が無い。 薬品に頼らない養殖が可能である。 その分、コストも抑えられる。

現在、「好適環境水」の養殖魚として、トラフグ、ヒラメ、タイに成功し、次のターゲットは、ハマチとシマアジ、そしてその先はマグロだという。 
世界規模で、漁獲量はこの50年で6倍以上に激増している。 2006年のアメリカの科学誌サイエンスで、
「このままでは、およそ40年後に全ての天然の魚が全滅のおそれあり」とう衝撃的な予測を発表がある。

三陸海岸に限らないが、突然の津波などの恐怖にさいなまれず、漁船も持たずに海水魚の養殖が低コストで生産出来る日も決して問い将来ではないと思う。
しかし、現在は特許を申請中であるので、技術の詳細や、研究の進捗状況、今後の企業化計画などの具体的な発表はなされていないが、政府がもっと前面に出て東日本震災復興の大きな柱として起用出来れば、従来のように、三陸海岸の低地に水産業を再構築しなくても、遠洋漁業や大陸棚漁業を補足する形態で、三陸海岸の高地だけでなく、東北地方の内陸でも高齢化した漁民の労働力と経験を生かして陸地でマグロやアジなどが養殖できるのである。 増産できれば輸出も可能である。
現在、日本には耕作放棄農地が40万ヘクタールある。 この耕作放棄農地の活用もできる。 
山本俊政准教授の属する岡山理科大学専門学校は岡山市の加計学園グループに所属する。 加計学園グループの方針にもよるが政府として、日本の将来のために是非前向きに取り組んで頂きたい。
陸上養殖が難しいとされる回遊魚を山で育てるのが山本先生の夢であるという。

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