日本は東日本大震災と併発した福島原発の放射線飛散、更に不安定な政治で混沌としている。 アメリカは経済がまた腰砕けの様な状態であり、要の人物であるガイトナー財務長官が辞任の様子であるし、来る8月2日の国債償還の目処が立たず、場合によっては「国家破綻(デフォルト)」なんてことが有るかもしれない。
ヨーロッパは「脱原発」の問題は一時的には治まったようであり、ギリシャの混乱も当面「収束」したようだが、決して「終息」では無いであろう。
こんな折、国家の破綻をその手前でブレーキを掛ける主役のIMF(国際通貨基金)のトップ・専務理事であったドミキク・ストロスカーンが「不祥事」の廉(かど)で失脚し、一時的には新興国の反発も有ったが、「欧州の指定席」といわれる専務理事の席は、引き続きフランスのクリスティーヌ・ラガルドに決定した。 就任は7月5日に決定した。
7月1日のニューヨーク州裁判所はストロスカーンの軟禁状態の処分を解除したという。 理由は被害者の女性の虚言で有ったという判断の様であり、今後、更に尾を引く問題の様である。 完全に無罪となれば、一番の焦点は来年のフランス大統領選挙かもしれない。 サルコジ大統領の心中は野党の有力大統領候補であるストロスカーンの動向であろう。
「豚(ぶた)」を英語で「pig」、この複数は「pigs」であることは誰でも知っている。 この単語をもじって「PIIGS(ピッグス)」がヨーロッパの問題として「国家破綻(デフォルト)」の瀬戸際に有ることで、世界で大問題となっている。 PIIGSはユーロの国家であるポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペインの国名の頭文字を指している。
2007年夏に問題化したアメリカのサブプライム・ローン危機や翌年9月のリーマン・ショックによって財政問題が顕在化した。 これらの国々以外でもイギリス、フランスのみならず、東欧の新興諸国も安閑としていられる状況ではない。 但し、財政問題の要因は国々によってかなり異なっているようである。
ギリシャは2010年初めから特に問題化し始め、翌年3月頃よりポルトガルへ飛び火した。 更に5月からギリシャ、ポルトガル、スペインの国債売りが加速し、アイルランドも影響を受けた。 2010年の早春から、世界の3大格付け会社はギリシャ、ポルトガル、スペインなどの国債の格付けを下げ始めた。
ギリシャのアテネで2004年にオリンピックが開催された。 ギリシャの歴史はよく知られているが、現在の人口は約1100万人、GDPは2008年で3575億ドル(1ドル=100円とすると約35兆円)、1人当たり30534ドル(日本は3415ドル)、国家予算は年間約12兆円であるから、日本の約1割の規模と考えられる。
ギリシャは1981年にEUに加盟した。 EUは1999年1月よりドイツ、フランスや11カ国でEUの統一貨幣であるユーロを導入した。 ギリシャは導入基準に達せず2年遅れてユーロの採用を始めた。 採用基準は「財政赤字はGDP比3%以内」、「公的債務残高はGDP比60%以内」である。
1990年の財政赤字がGDP比16%であったが、1999年には1.6%まで縮小させて基準をクリア―したが、公的債務残高は採用前の2000年初めにはGDP比104%であった。 これは基準値を大きく外れていた。 この状況であるギリシャに貨幣ユーロの採用を許可したEU本部の判断が甘かったこともあろうが、2004年開催のオリンピックに対するEU諸国の声援も有ったのだろうが、認可されたギリシャ政府の財政規律に対する意識を緩めてしまったのであろう。
2009年の財政赤字はGDP比13.6%、公的債務残高はGDP比115%と悪化していた。
産業面では観光がGDPの2割であり、製造業が各々約20%であり、業種は繊維、履物、加工食品、果実、たばこなどの軽工業などである。 その他海運業が盛んである。
2009年10月の総選挙で保守系の政権与党が敗北し、革新系の新政府が前政権の政府統計を粉飾していたことを摘発して、ギリシャ財政の実態が判明した。 そういう意味で他の欧州諸国の経済危機と要因が大きく異なっている。
ユーロを採用した2001年~07年の実質経済成長率は平均値で4.7%であり、EU圏平均値1.9%より高い数値である。 歳入は健全であったかもしれないが歳出に大きな問題が有った。
国債の利払いを除いた歳出中で「社会保障給付金」が44%、「人件費」が28%で70%に近い。
「社会保障給付金」は現役時代の平均年収に対する年金給付水準を「年金代替率」というそうであるが、その数値がギリシャでは93.6%である。 スペイン73%、イタリアが男子69.3%、女子が53.9%、ポルトガル53.6%、フランス51.2%、ドイツ40.5%、アメリカ37.1%、日本37.1%。 ヨーロッパでも地中海諸国は比率が高い。 特にギリシャはダントツである。
ギリシャでは法定退職年齢は65歳で有るが55歳から受給できる。 55歳で退職しても年俸差は6.4%減である。 これでは65歳まで真面目に働く人は少ないだろう。
「人件費」は、現在の野党となっている「新民主主義党」が政権担当期間(2004~09年)の政権中には選挙の功労者など約10万人を公務員として採用し、200億ユーロ(約2.5兆円)の歳出増をさせている。 歳出の約2割の増加である。 現政権党「全ギリシャ社会主義政権党」も1981~90年、1993~2004年に同様に選挙支持者を公務員として採用していたそうである。 1974年に君主制を廃止して以来、両政権は政権交代ごとに公務員を増員させてきたのが実態で有るそうだ。
公共部門の雇用は労働人口500万人中の25%で有り、公共部門はGDP比40%にもなるという。
歳入に大きな問題が有ったようである。 ギリシャでは脱税や税務署員の汚職が蔓延しているという。 医師、弁護士や小売業者が人口の約3割であるが、所得の過少申告が横行している。
税務署員の汚職は脱税への加担である。 2009年の新政権下で税務署幹部を交代させ、200人の職員を調査した結果、50人の職員の保有する不動産資産が年収5万ユーロに対して122万ユーロから300万ユーロであったという。 年収の約25~60倍の不動産資産を持っていたという。
税収の大きい財源である付加価値税は2010年2月までは19%であり、EUの標準的水準である。
但し、民間消費に占める付加価値税収の割合から算出する「実効税率」は約半分の10%である。
ドイツでは70%であるという。 何とも国民には住みやすい、生きやすい「天国」であった。
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